『ハコミ』について

 

「ハコミ」とは

ハコミセラピーは、1980 年代にアメリカ人セラピスト、ロン・クルツによって確立された心理療法です。仏教と道教の教えに哲学的基礎を置き、西洋のさまざまなセラピーを統合することによって生まれた、アメリカでもっとも新しいセラピーのひとつです。

「ハコミ ( HAKOMI ) 」という言葉は、ネイティブアメリカン、ホピ族の言葉で、「日常のリアリティのさまざまな側面に対して、あなたはいかに参画しているのか」という意味があります。言いかえるなら「あなたは何者か」とも言えるでしょう。

ハコミセラピーは、心とからだのつながりを重視した、静かで繊細な心理療法です。仏教瞑想的な「マインドフルネス」という意識状態にとどまり、そこで自然に起こってくる体験を丁寧に受けとめ、寄り添っていきます。すると、無意識のなかに潜んでいて、自分の人生をコントロールしている固定観念や思い込みなどに、気づくことができます。

生きづらさを感じている人はもちろん、健康な人がより健康になっていくための、たいへん優れた心理療法です。

(詳細は、ハコミ・エデュケーション・ネットワーク http://hakomi-jhen.com

 

<創始者ロンと私たち>

久美子

ハコミの創始者ロンは私にとって、父であり、教師だった。1998 年、「ハコミ」のセラピスト養成のトレーニングが始まり、私はその一期生だった。大きくて温かい人間 ロンの存在は、私の人生を方向づけ、ハコミセラピストとして、人々の人生にかかわることになった。

ここでは、私の忘れられない個人的な体験にしぼって書こうと思う。まだトレーニングを受けていたとき、家族の問題でどうしても参加できないことがあった。それをロンは覚えていて、日本にくるたびに、何年にもわたって…“久美子、大丈夫か ? ”と尋ねてくれたのだった。ロンは日本で出会う多くの人に愛を贈ったけれど、私のなかにも、温かいハグの感覚とともに…ロンの愛が生きている。

もうひとつ、ロンが立ち会ってくれた私自身の個人ワークの体験を思い出す。「ハコミ」は「こころとからだの関連性」を重視するセラピーだが、シンプルだけれどパワフル ! 、と驚いた実体験。それは、まず自分のいつもの姿勢をセラピストが観察する、そして、マインドフルネスの状態で、あるべき本来の自然な姿勢にゆっくりと戻してみる…というシンプルな実験だった。

私の右肩が少し下がり…その右肩は少し前に来ている、という指摘に基づいて、右肩を少し上げながら、少しだけ後ろに動かしてみみる。動きは 3 ~ 4 秒かけて… 1 センチくらいの、とても微妙な動き。その瞬間、 私のなかから、ドッと涙が溢れていた。”かわいそう“ ”かわいそうに“ と言いながら…。それは 26 歳で自死した弟への涙だった。

私は驚いた。こんなに素直に悲しめるなんて !  心の荷物が少し軽くなるようだった。しかし考えてみると、信頼するロンがその場にいてくれたからこそ、私は安心して、深い悲しみにふれることができたのだ。

ロンは今年 1 月、この世を去りました。好奇心に満ちた温かい笑顔は、いまも私のなかに生きている。「ロン、ありがとう。あなたの贈り物を大切にします。

 

優美

トレーニングコースの前年(1997年)、初めてRONが来日した際の紹介ワークショップに参加しました。何日目だったか? デモンストレーションのワークの希望に手をあげて、指名され、前に出ました。私は4,50人いた参加者に向い、ロンは参加者を背にする形で私の前に座りました。ワークシップに参加して感じていたことを一気に喋り、喋り終わって言うことが見つからなくなった時、思わず下を向いたが、気をとりなおして顔をあげたその瞬間に「ちょっと無理したね」とロンに声をかけられました。見透かされたようで、なんだか恥ずかしくなって下を向き、そっと覗き込むように見たとき、そこにはロンがいました。

「この人は何も期待していないで、そのままの私を見ていてくれる」と感じました。それは、生まれてはじめての体験でした。

ロンの目は、私をそのまま認めてくれていました。私の存在そのものを認められた気がしました。そして次の瞬間ロンから「チャイルドが出てきたね。いくつかな?」と聞かれ、私は「?????」。何を言われているかまったくわからずにいると、ロンが「ちょっと目をつぶって、内側をみてごらん」といいました。言われたとおり目をつぶると、「あっ!いる!いる!いる!」そこには、4,5歳の女の子が地面にしゃがんで背中をこちらにむけていました。「えっ?!何これ・・」とびっくりでした。私のインナーZャイルドとの出会った瞬間でした。
  
「周りに誰かいる?」「誰もいない・・・」「何しているのかな?」「一人で遊んでいるの・・・」そんなやり取りをして、寂しがっている私のチャイルドにロンから「どうしたい?」と聞かれ、「抱っこしてほしい」というと、ロンが「おいで」というので目を開けると、両手を広げたロンがそこにいました。ロンの胸に飛び込んでずっとハグしてもらいました。

そして、それから何回ハグしてもらったことか、、、、。

亡くなった今でも、ロンがそばにいて、私を応援してくれているのを感じています。

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